スタッフブログ

2019.07.03

狂犬病の恐怖

今朝の情報番組で、山口県周南市の公園で野犬が急増し市民生活に影響が出ているというニュースを見ました。

私が小学校だった頃はよく通学途中に野良犬or迷子犬を見かけたものですが、最近は“飼い主さんの意識”も、“動物の命に対する意識”も高くなったため、あまりその様な犬たちは見なくなったなぁ。と思っていたところですが、まだまだ地域としてそのような場所は残っているのですね・・

おそらく山口県の野良犬は初めは1頭2頭の捨て犬から始まったと思いますが、今では何十頭にも増えているようです。

もちろん野犬が多くいる地域は全国他にもあることと思います。

 

山口県周南市には外国からの船が出入りする港もあり、海外から狂犬病に感染したネズミコウモリが入り込んでしまった場合、管理されていない(ワクチン未接種の)野良犬がそのネズミを食べたり、逆にそれらに噛まれるなどして狂犬病が広がってしまう可能性があります。 周南市のHP上に狂犬病が持ち込まれる可能性について記載した記事が今では削除されてしまったとのことですが、いくら50年以上狂犬病の発生がない清浄国だったとしても、海外では狂犬病によって多くの人たちが命を奪われていますし、海外の船が出入りしている以上、いつ狂犬病が発生してもおかしくないと考えていていいと思います。

 

世界的に見て、狂犬病の清浄国は日本、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、アイルランド、アイスランド、グアム、ハワイ、スウェーデン、フィジー(フィジーについては検疫が十分でないという意見もあるそうです)

2013年まで台湾も清浄国として数えられていましたが、イタチアナグマ143例、ネズミ1匹、犬1例に狂犬病の感染が確認されて除外されてしまいました。

このように海で囲まれていて清浄国と言われていた国でさえ気づかない間に感染が広がっている可能性がありうるわけです。

 

狂犬病ウイルス自体は空気に触れるだけで死滅するほど弱いウイルスですが、潜伏期間が1ヶ月〜3ヶ月、長ければ2年、3年と、発症するまでにかなり潜伏期間を要することが、感染を拡大させてしまう原因になっています。

狂犬病ウイルスは傷口から神経を伝って、日に数ミリずつ中枢神経(脳)へ向かって移動するため、首などの脳に近い部分を噛まれた場合は発症が早く、足先など脳から離れた部分を噛まれた場合は発症が遅いという傾向があります。

 

一度発症すれば100%死に至るという恐ろしい病気。これは世界を震撼させているエボラ出血熱の致死率(50%前後)を大きく上回り、またその病気を発症してからの亡くなり方もとても悲惨なものです。

 

狂犬病という名前だけを見ると、犬が凶暴になる病気かな?と思われがちですが、狂犬病は恐水症とも呼ばれ、犬だけでなく哺乳類全般に感染し、水を見るのも恐ろしくなるほど嚥下時に痛みを伴います。このため、唾液の過剰分泌、食欲不振、不眠となり、病気が進行すると風や光にさえ痛みを感じるようになります。

学生時代狂犬病を発症した子供のビデオを授業で見ましたが、とても悲惨なものでした。

そして自分が発症してすぐはまだしっかりした意識も残っているため、自分が段々と狂っていくのが認知できてしまうため、精神的にもとても辛い病気だと教わりました。

狂犬病については厚生労働省のHPにも色々と詳しく載っていますので是非一度ご覧いただければと思います。

 

日本では何十年も感染が確認されていない狂犬病ですし、ほぼ全ての飼い主さんが飼い犬にワクチンを摂取していると思われますので知り合いのワンちゃんに噛まれてしまった・・・狂犬病にかかったらどうしよう。とすぐに不安になることはありませんが、海外に渡航された際は注意が必要です。

特に東南アジア・アフリカなどへ行く際は特別気をつけなければなりません。

 

狂犬病の人へのワクチンについては検疫所のHPに載っています。

 

日本にも狂犬病の暴露後ワクチンは存在していますが、近くの病院に行ってすぐ打ってもらえるものではなく、数もかなり限られたものですので、海外で犬に噛まれた際は躊躇することなくすぐに現地の病院を受診する様にしてください。

 

また、何よりも犬を飼われる方には狂犬病ワクチンは犬の命を守るためではなく、人間の命を守るためのワクチンであることを忘れないでいてほしいです。もちろん大切な家族の一員であるワンちゃんの命は大事。

でも、面倒だから・どうせ日本は狂犬病がないから・たくさん注射を打たせるのは可哀想だから・高齢だし。という理由から狂犬病ワクチン接種を怠ったことが原因で、その大切なワンちゃんが他の人の命を奪ってしまうことになったら・・。

 

自分にも大切な、かけがえのない家族がいるように、周りの人にも大切な家族がいます。

どうか『どうせ大丈夫』と思わず、この狂犬病という病気について少しでも知っていただければと思います。

 

日本が50年以上も狂犬病正常国でいられるのは、狂犬病予防法が施行されて以来、毎年狂犬病ワクチンを接種し、予防に努めてきた皆さん1人1人の努力があるからです

 

先月改正動物愛護法が成立しましたが、動物の虐待はもちろん、動物愛護法で定められている通り動物の遺棄も立派な犯罪です。飼えなくなったからといって遺棄した動物が、将来狂犬病を広げる原因となった時、この大きな責任を果たして負えるのでしょうか? 

どうか軽い気持ちで命を飼わない・軽い気持ちで命を手離さないでください

一度信頼した人に裏切られるのは人間でも辛いこと。裏切る人間は世の中にいるとわかっていても、それでも傷ついてしまうものです。それが純粋な気持ちで接してくるワンちゃん・猫ちゃんの場合、一度裏切られて傷ついてしまった場合、もう人を信じられないと感じてしまうのはとても自然なことではないでしょうか。心が傷ついて、人に対して不信感から攻撃してくるのも理解できない事ではありません。

 

犬も猫も他の動物たちも、人間と同じがあります。そして人間と同じがあります。

一緒にいて幸せ・何かをして楽しい・辛いことをされて悲しい・嫌なことをされたら怒る・怖いことがあれば怯える。という感情をもっています。

 

ACジャパンさんのCMでも度々取り上げられますが、動物の殺処分は昔に比べて減ったものの、依然として行われています。

その殺処分により命を奪われた犬猫の死因は、炭酸ガスによる窒息死ではありません。

本当の死因は、捨てた人の、『大きくなった・こんなに臭うと思わなかった・飽きた・家族旅行に行けないから・年をとって世話が大変になったから』という身勝手さからです。

 

飼いはじめる前に、この子はどれくらい大きくなるのか、どんな病気になりやすい犬種なのか、手入れはどれほどの頻度必要なのか、旅行に行くときに預けられる場所はあるか、自分が病気になったり、年をとって世話が大変になった時、動物のお世話・入院時の預かりを手伝ってくれる人はいるか。あらかじめ確認しておくようにしましょう。

 

 

今回は文章ばかりの上、とても堅苦しい内容で、長文になってしまいましたが、大切なことなので書かせていただきました。

 

8月のお盆期間中は当院は通常通り診療しておりますので(定休:火曜/お盆期間中は木曜午後予約Stop)、旅行や帰省により動物たちの預け先が無いなどございましたら受け入れておりますのでご相談ください。