スタッフブログ

2021.11.27

沈黙の

10月から11月にかけては体調を崩されてご来院されるワンちゃん猫ちゃんも多くいましたが、

特に体調に問題はないけれど、この時期に1回健康診断を・・ということで病院に来てくださる方も昨年に比べ多くいらっしゃいました。

 

人間よりも早く歳をとるワンちゃん・猫ちゃんは、人の場合年に1度の健康診断で済ませているところ、年2回行うことが理想ではあります。(自分の状態をなかなか訴えることができない動物なので尚更かもしれません)

春の健康診断キャンペーンでお配りした糞便検査半額クーポンや無料エコークーポンをこの時期上手に使って病気を発見される方もいらっしゃいました。

 

病気によっては、血液検査で異常が発見しやすい病気もあれば、エコーやレントゲンでしか見つけにくい病気もあります。

 

例えば、脾臓の腫瘍などは高齢犬で発生しやすい病気ですが、初期症状が“なんとなく元気がない、食欲がない”というものなので、「まぁ歳だしね。」「ご飯に飽きたのかしら?」と様子見をしているうちに腫瘍が大きくなって来院時期が遅くなってしまう。ということも少なくないかと思います。

実際私の実家で飼っていたラサ・アプソも高齢期に脾臓の腫瘍(後に病理検査で血管肉腫と診断が出ました)ができていたのですが、それに気がついたのは貧血が出るほどの末期になってからでした。

その他、健康診断から程なくして脾臓の腫瘍が破裂し、血腹でご来院になるという例も耳にします。この病気は、無症状のことも多く、末期にならないと貧血などの症状が表れにくいことから血液検査による健康診断だけで安心していると見過ごされることも多い病気です。(健康診断をした後だと、なおさら「“健康”だって言われたばかりだし!」と来院をせず様子見の選択をしてしまう一因になってしまいます)

 

健康診断は、あくまでその検査の範囲内での見通しであり、その時点での状態を検査しているものなので、100%の採点をしているわけではないのです。また、基準値も病院や機械により若干の誤差があるため、血液検査で数値が少しオーバーしたことをどう捉えるかもそれぞれだと思います。基準値はあくまでも統計的にこの範囲が健康といえるという指標であるため、自分の今までがどうであるか、今までからどう推移しているのかも大切な見方だと思います。

健康診断は“たまに”行うのではなく、“定期的に!”という理由はそこなのです。

もともと血圧が低いところで安定している人もいれば、筋肉量が多いという方、前日暴飲暴食してしまった、激しい運動やストレスのかかる環境にいたという通常運行でそうなのかふとした出来事があったのか。

トータルで自分はこの範囲を行き来していると予測できるなら問題なく、いつもの数値よりずば抜けておかしく変化していたら何かあるな?と疑うきっかけにできます。

その一点だけを見るのではなく、どう推移したか。は体の悲鳴を聞くのにとても有効です。

 

 

このために秋口くらいに使える無料エコークーポンを考えたのですが、たまたまそれをきっかけにエコー検査をして、肝臓の腫瘍や脾臓の腫瘍を発見された方が複数名いらっしゃいました。

 

全体像が無く、動画の抜粋写真になりますが、苦手な方はご注意ください。

こちらが脾臓にできた腫瘍です。

一箇所だけでなく、複数個ボコボコしたところが見られます。

エコーでの見え方も載せられたら良かったのですが、それは後々あるかどうか探しておきますね。

この脾臓は病理検査に出されましたが、その結果次第でその後の治療方針が決まります。

これがもし病気が進行していて貧血症状が出ていたら、麻酔をかけての摘出手術はさらにリスクのあるものになっていたはずです。

こちらの一件は、健康診断の意義をとてもよく反映した一例だったと思います。

一般的に沈黙の臓器というのは、腎臓肝臓膵臓を指しますが、脾臓もなかなか無口な臓器です・・・。

 

これから年末年始、お休みの動物病院も多くなってきますので、少しでも体調に違和感を感じたら早めの受診を心がけてくださいね。