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2021.12.18

共感疲労とともに生きる

コンパニオンアニマル獣医師のための世界的ジャーナル誌を読んでいて(←なんかものすごい雑誌のように聞こえますが、薄くて読みやすい雑誌です)、「共感疲労」について書かれたものがあったので、今回はそちらの話題をしたいと思います。

 

読んだのは結構前なんですが、筆が遅いので結局アップするのが遅くなりました。

 

まず「共感疲労」ってどんな疲れ?? 相手の話に『うんうん』と頷いていることに疲れてしまうこと? と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、この「共感疲労」というものは、相手の想いに強く共感し、当事者でないにも関わらず心を動かされ、同情することにより自身の心にも負荷を負ってしまう、いわば“思いやりの代償”として受ける心の傷のことです。

 

共感疲労は、獣医師をはじめ、介護者や医療従事者などの職業に就く方にリスクが高いと言われていて、

深い思いやりをもつほどに、助けようとする相手の苦しみに心が埋め尽くされ、緊張が極度に達してしまうために受けてしまう心的外傷のようです。

 

動物病院という場所は、飼い始めてすぐの、子犬子猫を迎えた喜びを共感することもあれば、虐待を受けた動物の治療をすることも、飼い主さんと長年連れ添ったであろう動物の最期を一緒に看取ることもあるという、1日のうちにも喜怒哀楽の感情が忙しく入り乱れる、まるで心のジェットコースターに乗っているかのような場所であります。

 

 

動物病院の繁忙期というのは、一般的に春と言われています。

確かに春の健康診断やフィラリア予防の開始、狂犬病ワクチン時期、新生活スタートとともに動物を迎い入れる人も増えるため、確かにご来院数は多い季節になり、予想される実質的な負担は春の方があるのかな?と思いがちです。

しかし、実際過ごしてみると毎年秋〜冬の季節の方が重い症状でご来院される方も多くなるため、1年の後半時期の方が『今日もようやく乗り切った・・・』と感じることが多くなるような気がします。

これが「共感疲労」を感じて過ごしている結果なのかもしれません。

 

共感疲労はリスクの高い職業に就く者にとっては完全に排除することができない仕事の副産物であるため、受け入れながら上手に管理していくしかないものです。

 

“疲労”とつけられてしまうと、要介護者さんや患者さん、患畜さんご家族の方が『負担をかけてしまった』『迷惑をかけてしまった』という、罪の気持ちを感じてしまう人もいるのでは?と思うため、私としてはすんなり溶け込んでこなかった言葉ではあるのですが、むしろこの「共感疲労」は大切な心の代償であり、管理さえ間違えなければ“幸せな副産物”にもなり得るものなのではないかなと思えるのです。

 

リスクが高いと言われる職業に就いていなくても、普段の生活の中でさえ共感疲労は存在するはずで、例えば自分の大切な家族が苦しんでいる様をみれば自分も同じく苦しいと感じ、ニュースで凄惨な事件・事故が報道されれば心がギューっとなり、

そんな、自身が受けたわけでもない悲しみに対して同じく辛いと感じることができるのは、きっと相手にも幸せになってほしい・知らない人であっても幸せにいてほしいと思える心をもっているからのはずです。仮に相手の幸せを願う心がなくなってしまったら、きっと世の中は自分本位の身勝手な擦れた付き合いで溢れてしまって、彩りのない毎日になってしまうでしょう。

 

動物に対して、家族に対して、関わるすべての人に対して(共感疲労=)同じく落ち込んでしまって、『自分が気をしっかり持たなければいけないのに・・』『同じく悲しんでいられない』『こんな心の弱いワタシでごめんね』と思う必要はなく、思ってしまったとしてもそれもまた大切にできる感情だと許してあげて、こんなにも心尽くして思える人・動物と出会えたことは最高に幸せなことなんだ。感じながら心をケアすることが必要なのだと思います。

 

ジャーナル誌には“ラストまでこの職業を続けるのならLASTが必要”と書かれていました。

LASTというのは、Listen、Accept、Seek、Testの略称で、

 

Listen:耳を傾ける

Accept:受け入れる

Seek:模索する

Test:試みる

 

の4つの過程になります。

 

▷自分が今どういうふうに感じているのか、心に蓋をせず自分の心に耳を傾け(Listen)、悲しみや苦しみを誤魔化さず受け入れる(Accept)。そして泣きたい時には泣き、叫びたい時は叫ぶ(Seek)、最後は誰かにこの想いを打ち明けたり感情を解放する試みをする(Test)。

 

このLASTは共感疲労の管理に対してだけでなく、色々なことに使える打開策のはずです。

色々な方が1年間を振り返ってみて困難なことがたくさんあったと感じていることでしょう。

医療従事者の方だけでなく、色々な職業の人・家庭のために尽くして頑張ってきた人が「今年もあと少し!」と、最後の力を振り絞って奮闘していることでしょう。(年末年始もお休みのない方も多いですが)

もしくは、もっと尽くしてあげたかった・もっと頑張りたかったのに頑張りきれなかった・・。と自分を責めてしまっている人もいるのではないでしょうか。

 

自分一人のことだけを考えていない人ほど心の疲労や負担は大きいものです。でもそれは同時に、自分自身に大切な人・守りたいものがたくさんある証拠です。

 

心が重くなってしまった時は是非、自分に正直に!自身を救済するために! 極限の状態になる前に、LAST”を試してみてください。

 

 

最後のお写真は、最近お迎えしてきてるマジカルブーケたち。

嬉しいことに対しても、もちろん利用していますが、ショックなことがあった時、亡くなった子たちがいる時など頻繁に訪れるようにしているのがお花屋さん(虹の丘のフラワーどさん)。

自分の悲しみを可視化して、なおかつビタミンF(Flowerが心のストレスを癒すという力)ももらえます!

私の実践しているT(Test)は、お花屋さんに行って、店員さんとお話ししてお花をお迎えしてくることかもしれません。